室生犀星記念館開館3周年記念 童話朗読会「犀星の童話を聞こう」  
 

2005年8月1日(月) 10:30 / 14:00 (二部公演)

 
  6月下旬、丹羽館長よりお電話を頂戴し、企画展「犀星 児童文学の世界」より童話二編の朗読上演依頼をお受け致しました。
まだまだ勉強を始めたばかりの私達に「がんばれ!」と背中を押して下さったお心と、ご期待をひしひしと感じ、気を引き締めて稽古を積んで参りました。
 
     
 

 

「蝿と蟻との話」
「蘇った蝿−蝿と蟻との話 そのニ
「小学男生」4-3(大正11年3月)
*『室生犀星童話全集三』 (創林社刊)収録

出演者
  
 蝿 / 藤田喜美代
 蟻 / 数沢淑子
 ト書き・蟻の友達 / 橋野千恵子

 
         
   


ト書き (橋野千恵子)
蝿は枯れ葉の裏に動かずに、じっとしている。冬晴れの暖かい日、穴の奥に蟻がいて、これもじっとしている。

 
         
 


藤田喜美代)
暖かい。ひるまは実際あったかくて有難い」

   
         
   


蟻 (数沢淑子
「そのかわり晩になると寒い。穴の奥まで凍みてくるからな。だが、だんだん暖かくなるようだな」

 
  蝿 「たまらないあたたかさだ。すこしずつ見え
   はじめたよ。お前の顔もうっすりと見える」
蟻 「そうかい、見え出したかい。あの青い芽が
   みえるかい。ほら土手の上の、ずっと青く
   そまったのが・・・」
  蟻 「用心しろ。今夜は雪かもしれないぜ。
   空をみろ。白いやつがくるかも知れない」
蝿 「ほんとに降るかな・・・」
 
     
       
  犀星児童文学の動物達の世界を描いた作品の数々には、小さな命をも慈しむ犀星の優しい心情が溢れています。
人間も動物達も、さまざまな出来事に遭遇し、乗り越えていく姿は同じではないか、だからこそ「今この瞬間」に生命を燃やし生き抜くことが最も大切なことなのだ。そういう声が聞こえてくる犀星文学は、これからも私達の心を揺さぶり続けるように思う。感謝。
   
 

室生犀星記念館 企画展「犀星 児童文学の世界」
開催期間平成17年7月4日(月)〜11月6日(日)会期中無休
ホームページ http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/bunho/saisei/

       
 
 
       
   

「虹おとめ」
「少女倶楽部」2-6 (大正13年6月)
*『室生犀星童話全集三』 (創林社刊)収録


出演者 高輪眞知子

  むかし支那に、馬(まあ)さんという渡舟を商売にしている一人の若い男がありました。    
 
馬さん
「わたしの嫁さんはもっと美しくて、もっと小さく、もっと白い歯のよめさんに違いない」
 
マアさん、マアさん、水の中。水の中には宮殿。宮殿のなかに灯がともれ、灯ともれたなかにマアさんの、清いよめさん、よめごさん。手をば叩いて呼びまする。呼びまする。
 
         
   
虹の精 「さよなら、馬さん、どうぞ一生しずかに
     水をながめておくらしなさいまし、そこに
      わたしがおりますから」
 
  馬さん 「それでは白さんを下さい。わたしも白さんをほしいのです」
     
音響・照明 表川なおき
 





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