古小屋に舞台照明機構を備える為の工事  
 

2005年11月13・14日

 
  ナオジェクト  〜その時、日本家屋解体男が見たものは〜  
  朝早くに私は自宅から出発したのであったが、さていよいよ自転車に乗ってしまったとなると、小屋を見るまでのわずか16分ばかりの時間が、退屈で待ち遠しいもののように思われた。もちろん幾日ぶりかで自転車に乗った私にとっては、そんなじめじめした気持ちさえ切り離せば、時候といひ自転車の乗り心地といひ、沿道の自然といひ、全て快適でないものはなかった。
それは晩秋から、ようやく初冬に移りかけた11月13日のことで、朝早くに自宅から出発した私は、何となく自転車のクッションになじみがたいやうな気持で、窓から流れるやや肌寒いおやじギャグに顔をしかめながら、物めずらしさうに、マスターの広い平原を眺めてゐた。
 
     
     
  11.13(日)
ええ〜初日の写真たくさん事細かに撮ってあったのに、パソコン内の保存先が分からなくなり、初日写真は現在行方不明なのだ。もしかして保存失敗してるかも・・・無念。という訳で、初日の解体工事の過程は、いささか味気なくも不得意の語りで記録してみますです。
 
 

9:00 天井解体作業開始
9:30 かぜ組 みつこさん着→買出し

なお様ご機嫌うるわしゅう、天井板をはずしまくる。いけいけ〜!天井を空けると板裏のほこりがドバーっと落ちてきて、部屋中真っ白・・・ちょっと早いがまるで粉雪を思わせる厳しい始まり・・・。♪動き始めた汽車の中で僕は時計を気にしてる、季節外れの雪が降ってる〜♪(なごり雪)

 
  10:00 天井板外し終わる
     かぜ組 よしこ姐さん着
外した天井板は、屋根防音に再利用する為、よしぴ〜に入念に掃除してもらったのだ。  
  10:10 天井板を支えていた骨組みを解体
11:00 かぜ組 しげこさん着

骨組は縦に7本、横に15本くらい交差して張り巡らされていた。こんなの外すの初めてだったけど、やってみると楽しい楽しい・・・ガチャン、バリバリ、ドッカーン!(ご想像にお任せします)この繰り返し、壊しながらも粉雪が降り注ぎ、骨組み金具がガチャンガチャンと落ちまくり、「お〜い、俺に近づくと危ないぞ!」と、ところ変れば色男のセリフめいた掛け声を威勢良くかかけながら、ルンルン気分で解体していったのだ。
一方、かぜ組三人娘には、解体された骨組みを外へ搬出したり、落ちたほこりを掃除したり、片付けに追われる破目となり・・・とほほ(だったはずごめん)

 
  12:00 みんなで昼食 差し入れのおいしい昼食でほっと一息・・・。  
  12:30 再び骨組み解体 「俺に近づく怪我するぜ!」「もう・・・片付け大変」  
  16:30 初日解体作業終了 「んじゃ、おつかれ〜(^o^)/」  
       
       
 
       
  11.14(月)〜16(水)
2日目からは、まいどおなじみ、金沢職人大学校の匠・野村さん(ノムさん)と、前田さん(マエさん)のお二人に来て頂きました。写真では、すでに天井に石膏ボード貼ってあり、これより3日目の現場写真を紹介させて頂きますです。職人用語飛び交う現場の雰囲気が、かっこよくてたまらないんだよなあ(^_^)
 
 
左・ノムさん 右・マエさん
   
 

マエさんが、石膏ボードを貼る為下地作りのタルキを縦に取り付けている。その間、ノムさんはマエさんが計った寸法に合わせて、貼り付ける石膏ボードを用意している。石膏ボード(9mm)を2重にして貼り付け、防音効果を高める。  
       
 

下地づくりとして、縦にタルキ、横にヌキを打ち付けていく。

 
       
  座敷の「風花雪月」上にある換気扇と同じものが舞台側にも1つあり、一度取り外し、今度は舞台壁面へ備え付けることに。寸法を計って、石膏ボードを切り抜く。←この技術は圧巻だった。写真だけでは分からないけど。  
 


野村 正
金沢匠の技能士
(大工)
17.9.25金沢市認定

 
   
 
びふぉー
あふたー
 
 


ノムさんに負けじと、志村金物店さん側の壁面を補修してみる。

 
       
  壁面の土壁は雨風と年月に耐えかねて崩れ落ちて、板1枚だけで雨風をしのいでいたのだ。音は、窓を開けているのと同じで車の音はもちろん、私達の発声練習の声まで外に漏れそうじゃ・・・。
左写真では、志村さんちの屋根、そして信号待ちの軽自動車が写っている。
 
       
  左右写真は石膏ボードを貼った後だけど、外壁とボードの間に、吸音の為、古新聞を2、3冊重ねたものを沢山打ち付けてあるのだ。  
       
  朗読もいいけど、こっちも楽しいので・・・。  
  足場組むぞって言われてたから、てっきりマイホーム建築工事現場などで見られる足場を連想していたけど、なんとこんなにも簡単な足場?後で分かったけど、移動しやすく高さ調節も自由自在・・・。でもね〜初めて乗る時怖かったよ〜。慣れれば何ともないのだけど。  
       
       
 
       
 


わしも朗読してみたいんじゃが・・・平均年齢はいくつかな・・・。


のむさん大丈夫っす。うちは可愛いお姉さんばっかりだから、きっとモテますよ・・・。

 
       
  11.17(木)・21(月)
職人大学では、有志が集まり、仕事以外に謡(うたい)を習ったり、お茶を習ったりしているそうで・・・建物や茶室を建てるだけではなく、その中で行なわれている「しきたり」「芸能」を学ぶことにも積極的に取り組んでいるそうです。

左写真は屋根と壁面の境の防音処理の為、意地になって詰め物した状態。
 
  捨てるはずの石膏ボードのあまりを打ち付けていき、更に、その上から加工した石膏ボードをかぶせていく。この作業が1番難しかった。というのは変形しているハリにぴったり合うように、切ったり削ったりして神経を使うからなのだ。  
 

よし、石膏ボードまたかぶせる。車の音なくなりますように・・・。

 
  小屋作りの為、今年夏に購入したインパクトドライバー。その名もマイケル(注:1)。浅野川倶楽部内装外装トイレ工事にはこのマイケル君が大活躍。しかし今朝工事中に落としてしまいドライバーの付け根が折れちゃって・・・布テープ貼って頑張りました。  
  のむさんが「金沢の匠」なら僕は「禁煙室2階の匠」ぷぷっ。ちょ〜とみんな〜見てくれよ〜頑張ったんだから・・・この壁面・・・う〜んビューティフル(注:2)  
  そんなウキウキ気分の匠をよそに・・・金沢の匠はバンバン壁面を仕上げていく。体のキレ、段取りの早さ、やっぱすげーな。  
 
左から
25mm君、32mm君、38mm君

工事で使った工具類に親しみがわく。
 
  コンプレッサ???名称不明  
  仕上げは・・・天井や側面に貼った石膏ボードとハリとのす・き・まに木の縁をあてていくのだ。  
  おらも一緒に打ち付けていったじょい。よく建築現場から聞こえる「プシュッ!プシュッ!」て音を出し木材や壁を打ち付けていく工具「コンプレッサ???」を使う。おらこんな職人さんの使う機械使うの初めてじゃったけど、こいつはなかなかいいもんじゃ。ピストルの玉のようにクギをプシュッて打ち付けて、跡形目立たない。りくつなものじゃった。  
   のむさん、1番高いところやってる。おらは低いほうからやってみた。少しはお役に立てているのかどうか・・・。  
       
  築50年以上と伝えられる我が朗読小屋、年月を経て柱が取り払われ、大きなハリと、大きな鉄骨が小屋の屋根を支えている。これが鉄骨じゃ。  
  いよいよ大詰めじゃ(さっきから田舎語)。  
  見よ!これがペンキ塗る前の状態じゃと話す日が来るであろう・・・。いいもんやね。のむさんの技にただただ感服。  
   
   思い起こしてくれ。これが2005夏じゃ。
そして2005晩秋じゃ。
 
       
 
のむさん、まえさん、ありがとうございました (^_^)
 
       

 
         
 

♪風の中のすっばるぅ〜、砂の中のぎんがぁ〜、みんなどこへいぃったぁ〜、みおくぅぅられることもなくぅ〜♪

50年の歳月を経て、今ここに蘇ろうとしている小屋の姿に、日本家屋解体男が見たものは・・・?天井解体、粉雪のようなほこり、真っ黒なスス、匂い・・・この小屋の前身は、バレエ団、うどん屋、着物屋、麻雀屋、そして怪しげな店だったらしい。賑々しい小屋の風格に歴史の匂いが漂い、時代に潜むこの界隈の猥雑さを感じさせる。
かつてこの界隈に実存していた芝居小屋。小屋を取り巻く祝祭空間。古き良き時代の風俗習慣は、このまま消えてなくなる運命なのか・・・現代人が、祭りの縁日に心が和む理由は・・・無意識に先人が培った祝祭空間の再現へ憧れを抱いているからかも知れない・・・。
藩政時代の経済の中心であった尾張町。裏通りの下新町は劇場都市金沢のメインストリートと呼ばれた・・・並木町の映画館が消え、かつての賑わいを見せているのは浅の川園遊会・・・観光地化が進む中、今、私達に求められていることは申し述べるまでもないが、いまここに、私達が私達らしい日々を送る為に、皆で守り育て次世代に継承すべきことを、この朗読小屋で語り合っていきたいと思うのであった・・・ (田口ナオロヲ)

 
       

(注:1) 名前はありません。(注2)鴨居の上部分のみ。天井は大工職人マエさん。





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制作 表川なおき

 

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