2006夏・夢がたり十八夜    
   
十夜 8月6日(日)14:00
 
       
       
 
濱口國雄作 「犯罪人」

菱田純子
 
 
濱口國雄作 「飢」

岡本正樹
 
 
徳沢愛子作
「かたいもんにならにゃ」


志牟田敬子
 
 
徳沢愛子作 「福寿草なら」

中島佳代
 
 
安田桂子作 「夢の外に」

菊川豊子
 
 
寺本まち子作
「枇杷の葉の下」


菱田純子
 
 
井崎外枝子作 「ほたる」

斉藤郁子
 
 
吉田さかな作
「雨の夜の物語」


岡本正樹
 
 
三島由紀夫作
近代能楽集の内 「葵上」

菊川豊子/志牟田敬子/高輪眞知子
表川なおき/牧野知恵子
 
 
 
       
       
 
       
 
 
 
弁士おのぶ
打ち合わせ中
 
 
 
 
ようこそ〜
いらっしゃいませ〜
 
 
 
 
名コンビ?
何故か乾杯
 
 
 

 
 
 
 
 
 
美男美女と野獣
 
 
 
 
数さんサンキュー
 
     
 
 
 
 
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  「人間失脚」 〜太宰が告げるNの肖像〜  
 
第10の手記
 
 

夏目漱石「夢十夜」を連想させると、調子に乗って口にしたことが紙面に紹介されてからというもの、Nはロマンチシズムを心掛けて舞台作りに専念していた。観客動員数も徐々に持ち直してきた。舞台の質も上がってきた。日頃より悩まされている橋場町交差点付近ですれ違うダンプの運ちゃん同士のコミュニケーション手段である派手なクラクション音がない。まったく不思議なことがあるものだ。夏はダンプ業界は仕事がないのか環状線が完成したからか理由は解らないが、ロマンチシズムにダンプが介入して来ないように願うばかりだ。だがしかしついに救急車のサイレン音がやってきた。心待ちにしていたサイレン音は、葵上のヨットのシーンで鳴り響いた。湖上でのプラトニックな愛を刺激するかのように風の効果音が六条と光を包んで、うっとりとするようなサイレン音が会場にこだまする。湖の面がひきつっているねえ、という光の台詞は出演者の表情のひきつり具合を解説しているようだった。舞台にハプニングはつきものだ。朗読小屋で舞台を続けていくにはその覚悟と平常心が必要だ。

本日の救急車は森本方面から兼六園方面へ向かい国立や金大附属病院ヘ駆け込むものではなく、兼六園方面から森本方面へ向かい尾張町NTT病院へ駆け込むために、橋場町交差点を通過してすぐ岡薬局前でサイレンを止めて左折し朗読小屋前を通ったように思える。近隣の住居への配慮からか岡薬局と朗読小屋前でサイレンを止めるよう自治体と約束をしているのかも知れない。しかし、朗読小屋直前までサイレンが鳴っているので、上演を妨げるつもりなのか配慮してくれてるのか中途半端な状態なので相手方の意志は計りかねる。小屋の防音工事を行っている時、Nは公演日には道路封鎖して歩行者天国にしたらよいと考えることがしばしばあった。とはいえ、国土交通省を相手に裁判を起こせるはずもなく、芝居小屋周辺を人力車や火消しの男衆が掛け声を掛けながら走り抜けているのだと懸命に理解しようと努めるのであった。

本番前、まちこ女史の気合い入れがあったらしく涙する出演者もあったそうだ。一期一会。「気合いだあ!」で有名なアニマル浜口氏は実はNの尊敬する人物であった。以前、浜口氏がテレビ番組の中で海に向かって「気合いだあ!」と叫んでいるシーンがあって、アナウンサーが浜口氏に「浜口さんにとって人生とは何ですか?」と質問した。浜口氏は「人生かぁ・・・人生はわからん!わおぉぉっ!」と海に向かって吠えていた。その姿はけたたましくあり、野生的な人間の凄みを感じさせた。しかしその後ろ姿にはとてつもなく優しくガラスの心を備えた人間の悲しさが滲み出ていた。「浜口さんにとって強さとはどういったものですか?」馬鹿な質問をするアナウンサーだとNは思いながら聞く耳を立てた。氏曰「強さかぁ・・・強さとは優しさのことだあっ!」ポカンとした表情のアナウンサーをよそに、浜口氏は再びに海に向かって叫んでいた。この時Nは、アニマル浜口氏の人生観に深い感銘を受けたのであった。

 
 
 





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制作 表川なおき
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