徳田秋聲作「白い女」 | ||
解説 徳田秋聲記念館
学芸員 大木志門 |
||
リアリズムの作家・徳田秋聲と怪異譚とは一見縁遠く思われる。だが柳田国男『山の人生』(大正15年)に収められた、秋聲からの聞き書きはどうであろう。秋聲の幼少期、隣家の青年が徳田家と境の柿の木の下に下駄を脱いだまま神隠しに遇い、総出で探しているうち、不意に天井裏に物が落ちる音がして戻ってきたという。意外というべきか、はたまた当然というべきか、同郷の泉鏡花同様、秋聲もまた北陸の民間伝承豊かな土壌から血肉を得た作家なのである。 |
||
濱口國雄作「犯罪人」「飢」 | ||
解説 井崎外枝子 |
||
|
||
濱口國雄(1920〜1976)
――戦争が濱口國雄という詩人をうんだ。僕をそだててくれたのは国鉄詩人連盟の運動であった。(第1詩集『最後の箱』のあとがき) どこをどうとってきても極めてテンションの高い濱口國雄の言葉である。没後30年、戦後60年をへた今、これらの言葉は遠のくどころか、日々身近に迫ってくる。濱口國雄の仕事を見直さなければという機運が高まってきた矢先、こうして多くの方によって“濱さん”の詩が読まれるのは、まことに心強いかぎり。まして8月15日、この日が近づいてくると、濱さんは、敗走と飢えと死にさらされた西部ニューギニアの密林地帯を思い出し、心がうずくといい続けたその日をはさむようにして、「飢」と「犯罪人」という二つの戦争詩が読まれるというのは、なんとも不思議なご縁ではなかろうか。 [濱口國雄 略歴] |
||
|